セックスレス1100日目
1100日目になった。
数字的に見ると妻とそーゆー行為をそれだけしていないのかと、ほんの少しばかりリアリティが湧く。
ブログで可視化したお陰か、
それとも関係ないのか。。。
本当の事はまだ僕にはわからない。
仕事の後に約束をしていた経営者のAさんと飲みに。遅れる連絡を入れた電話越しに聞こえた声や雰囲気に、少し嫌な予感がしつつ指定された店へ向かう。
北口から大きく大回りしながら、飲屋街のキャッチと、色仕掛け勝負のお姉さん達のディフェンスを突破する。
嫌な予感から防衛反応が働いたのか、
コンビニで気休め程度の「悪酔い対策」として、菓子パンとヨーグルトを路地の片隅で胃袋に入れお店へ急ぐ。
念には念を。
僕は左手薬指のリングを外し、バッグのポケットに忍ばせた、ディズニーランドで一昔前に流行った革製のブレスレットにリングを通しては、ボタンで止めてカバンにしまう。
別に結婚していることは隠さなくていい。
でも、なぜ隠すのか。
正解はただひとつ。
「僕のことを好きな女性に、結婚していることを隠す為」だ。
準備していた事は功を奏した。
僕のことを好きだと言った「きよみ」は友人と店にいた。
まさかとは思った反面、
やっぱりなとも思う。
30代後半のきよみは少し年上で、
大学の教授を相手にするような、
キャリアウーマンだ。
白い生地に黒のドットのブラウスに、
ネイビーのレースのタイトスカート。
流行りのOLど真ん中のファッションで、
傍から時折見えるブラジャーが、
僕の好奇心を煽ってくる。
「久し振りだね」
の一言に「ようやく来たわね」の意味も含めたきよみ。
軽めのジャブをかましてきた理由がある。
僕はきよみの誘いを数回「ドタキャン」していたからである。
ある日、きよみは悲しいことがあったと僕を誘い、彼女の家の近くで飲んだ帰りの24時。
社交辞令を思いっきり含んだ、
「遅い時間だし、家の近くまで送るよ」
という言葉を、ダイレクトに受け止めてくれたきよみはその日、お互いに明日が休みとわかると「家で少し飲み直さない?」と目を潤ませて僕を誘った。
僕はその誘いを気付かないフリをして
丁寧に断った。
何故なら、
家には妻が帰りを待っているからだ。
返って「誘惑にならなかった、誠実な男」
という偽りのレッテルが、きよみの中で僕の価値を上げ、それ以来執拗に誘われることになった。
僕は断り続けていたし、そもそも「やっちゃったら、めんどくさくなるタイプ」という明らかな結論が、僕をきよみから遠ざけた。
それ以来のきよみとの再会。
友人がいたせいか、共通の友達としての飲み会だったが、帰りの集団でギュウギュウになった社内で僕ときよみは、まるで抱き合うかのような状態になっていた。
僕が先に降りる。
きよみは次の駅だ。
降りるのか?
誘うのか?
微妙な空気は僕達を駅で別れさせた。
指輪は外していたが、友人が結婚したことを伝えていたのだろう。
僕はそのまま帰路に着く。
ダメなサラリーマンのように、
25時のラーメンを食べていた。
セックスレス1100日目。
帰ったら奥さんは、きっと、眠りについているだろう。